kolmanda

planeedi saladus

kolmanda – planeedi saladus

初夏の夜に
 
オヤ、蚊が鳴いてる、またもう夏か――
死んだ子供等(こどもら)は、彼(あ)の世の磧(かわら)から、此(こ)の世の僕等(ぼくら)を看守(みまも)ってるんだ。
彼の世の磧は何時(いつ)でも初夏の夜、どうしても僕はそう想(おも)えるんだ。
行こうとしたって、行かれはしないが、あんまり遠くでもなさそうじゃないか。
窓の彼方の、笹藪(ささやぶ)の此方(こちら)の、月のない初夏の宵(よい)の、空間……其処(そこ)に、
死児等(しじら)は茫然(ぼうぜん)、佇(たたず)み僕等を見てるが、何にも咎(とが)めはしない。
罪のない奴等(やつら)が、咎めもせぬから、こっちは尚更(なおさら)、辛(つら)いこった。
いっそほんとは、奴等に棒を与え、なぐって貰(もら)いたいくらいのもんだ。
それにしてもだ、奴等の中にも、十歳もいれば、三歳もいる。
奴等の間にも、競走心が、あるかどうか僕は全然知らぬが、
あるとしたらだ、何(いず)れにしてもが、やさしい奴等のことではあっても、
三歳の奴等は、十歳の奴等より、たしかに可哀想(かわいそう)と僕は思う。
なにさま暗い、あの世の磧の、ことであるから小さい奴等は、
大きい奴等の、腕の下をば、すりぬけてどうにか、遊ぶとは想うけれど、
それにしてもが、三歳の奴等は、十歳の奴等より、可哀想だ……
――オヤ、蚊が鳴いてる、またもう夏か……

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